慧音の過去妄想

これ自体考えたのは2~3年ほど前ですが、Evernoteの奥底で眠っているよりは供養になると思ったのでここに投げておきますね。



白澤(はくたく)は、中国に伝わる人語を解し万物に精通するとされる聖獣である。漢字制限により日本では、白沢とも表記される。
麒麟(きりん)や鳳凰(ほうおう)と同じく、徳の高い為政者の治世に姿を現すとされる。
その姿については諸説あるが、牛のような体に人面、顎髭を蓄え、顔に3つ、胴体に6つの目、額に2本、胴体に4本の角を持つ姿で書き表されることが多い。
そのほかにも、獅子や竜のような体のものや虎の顔のものなどがある。
聡明で森羅万象に通じ、古来から病魔よけとして信じられてきた。白澤に遭遇するとその家は子々孫々まで繁栄するといわれている。



■何故聖獣とされる白澤が慧音に憑いたのか。

□ハクタクは徳の高い為政者の治世に姿を現すとされることと、廟魔除けになると信じられている事から、
為政者は身近にハクタクに関するものを置いた。

慧音の苗字が「上白沢」である事から、慧音の家系はハクタクの恩恵を重んじ、信仰してきたのではないか。
よってハクタクに近しい存在である。


医学の祖となる中国の伝説上の三皇五帝の一人である黄帝が、東方巡行した折に遭遇したとされる。


▼上白沢の家系は代々ハクタクの恩恵を重んじ、信仰してきたはずなのだが、ある時を境にその血筋が途絶えてしまう。
ハクタクの力に目を付けた有権者がその権利を使い、上白沢の家系を故意的に絶やしたのだ。
結果泣き叫ぶ乳飲み子を遺して家人は凄惨な最期を迎えることになった。

しかしのちにハクタクの力を利用しようと企む有権者は謎の病により惨たらしく死に、また、それに関わる人間も次々と命を落としていった。
以来ハクタクの祟りを恐れた人間は上白沢家に近寄る事が無くなった。

誰も近寄ることもなく、面倒を見てくれる人間もいない家で独り、乳飲み子は母親が来るのをただひたすら待ち、泣き続けた。

自身の存在で上白沢家の家系を破滅させてしまった事に深い悲しみと責任を感じたハクタクは、それから老人の姿に化け、乳飲み子の面倒を見る事に。

乳飲み子が彼を受け入れる事は容易く、すぐに彼に懐いた。

また、彼も娘のように子を愛し、「慧音」という名前と、智慧(ちえ)を授けた。

生まれた時から体が弱く、病気がちだった慧音であったが、ハクタクは自らの病魔を除く力を使う事無く自らの手で薬剤を調合し、慧音に与えていた。
というのもハクタクが妖怪としての存在を維持できるのは人間からの信仰が大きく、祟りの一件でハクタクを信仰する人間が居なくなってしまったからである。
その為老化が加速し、次第にその力も弱くなっていった。
しかし、ある日慧音がハクタクが皺だらけの手で薬を作っている姿が大好きと口にしてからというもの、力が無くとも嘆く事など無いと安堵していた。

ハクタクの世話の甲斐あり、慧音は病気と闘いながらも育っていった。

年頃の娘になった慧音の中に、ひとつの大きな夢が膨れ上がる。

それは、教師になる事だった。

沢山の智慧を授けてくれたハクタクのように、自分もまた、同じように子供たちに知識を授ける存在になりたい。


その事を伝えると、ハクタクは「きっとなれるさ」と笑って慧音の頭を撫でた。

しかし病魔が慧音の身体を蝕む。日に日に寝ている時間が増えてきている慧音の姿を見て、もう長くはないと感じていた。

ハクタクは、己の無力さを嘆いた。
昔の自分であれば彼女の病魔を除く事は容易いはずであった。しかし、信仰もなく、自身の肉体も朽ち果てようとしている。
ここまでか、と慧音と共に朽ち果てる道を、一度は選んだ。

しかし。
彼女には夢があった。

知識を必要としている子供たちを導き、教えを説く師になりたい。
また私も、彼のような存在になりたいと。

その夢を見届ける為に、人間を愛した妖怪は、自らの命と引き換えに自分の半身を彼女の身に宿した。

半妖は一切の病を知らない。
あらゆる病を退け、その強い妖力で自分の身を守る事が出来る。

しかし、ハクタク以外に心を許す者がいない慧音にとって、
自身の存在が消える事実はあまりにも大きな負担となってしまう事を
恐れたハクタクは、自分が存在したという歴史だけを食べる事にしたのだった。


そんな妄想。